2008年12月30日火曜日

希望



永井するみさん「希望」
3人の老人を惨殺した少年が出所してくる。その少年を取り巻く家族、母親のカウンセラー、母親に寄り添う雑誌記者、刑事、被害者の孫たちが絡み合うストーリー。
文章も読みやすく、途中(最後の方)まで面白く読めたのですが、最後がなぁ…。
結局、周りの人間がドタバタして話は進んで息いくものの、少年の心の闇はわからないまま、消化不良のお話でした。

2008年12月20日土曜日

ゴールデンタイム―続・嫌われ松子の一生



山田宗樹さん「ゴールデンタイム―続・嫌われ松子の一生」
「嫌われ松子」の一生をたどっていた甥の川尻笙と、元恋人明日香のストーリー。
たんたんと話が流れて生きます。嫌われ松子ほど波乱万丈ではないのですが、なんとなく共感できる若者像です。
一緒に収められてる松子に惚れていた元ソープランド店長のサイドストーリー「八雲にて」の方が短いながらもじんときました。

2008年11月23日日曜日

嫌われ松子の一生




山田宗樹さん「嫌われ松子の一生」
映画化・ドラマ化もされたあの有名な小説です。
有名すぎてなんとなく読みそびれていましたがやっと読みました。
名作です。
一人の女性が落ちぶれていく様が見事に描かれています。
美人で優等生の松子が、紙一重のところで不運な道に進んでしまう。そして落ちぶれていくたびにとうとう殺人まで犯してしまう。
男運がない、不運、言葉ではいいつくすことはできませんが、誰にでもそんな要素はあるのかなぁとも思えてしまいます。
松子のことを慈しみの心で包んであげたいと思いました。

ママの狙撃銃



萩原浩さん「ママの狙撃銃」
幼い頃、アメリカ人の祖父のもとで教わったスナイパーの技術。そして1度だけ任務を遂行する。
日本で優しい夫と2人の子供に恵まれ平和に暮らしていたが、かつて任務を依頼してきたKが25年ぶりにコンタクトをとってきた。
家庭を守るために再び任務を遂行していくことに。
ありえない設定ですが、娘をいじめる性格の悪い同級生を懲らしめるサブストーリーは面白かったです。
ハードボイルドというよりも娯楽ハードボイルド小説です。

2008年10月29日水曜日

厭世フレーバー



三羽省吾さん「厭世フレーバー」
父親がリストラにあい失踪したあと、残された家族たちの連作ストーリー。
14歳の中坊、17歳の女子高生、27歳の長男、42歳の主婦、73歳のおじいちゃん。
複雑な関係の家庭だからか、生きてきた時代が違うからか、みんなそれぞれバラバラなことを考えながらも生きている。
おじいちゃんの戦中戦後、母親のバブル時代、そして現代、みんな時代に影響され、ぶーたれながらもこれからも生きていくんだなぁ…。

2008年10月7日火曜日

無痛



久坂部羊さん「無痛」
一家四人惨殺事件。頭をハンマーで殴られ殺す躊躇ない残忍さ、死体を一箇所に並べて座らせる異常さは人格障害の犯人による犯行なのか?
生まれついての犯罪者はいるのか、犯罪者に表れる身体的な特徴である犯因症、痛みを感じることの出来ない身体に生まれた人間、メールでしか会話できない少女、変態的なストーカー、心神耗弱者の行為は罰しない刑法三十九条とそれを悪用するやつら、そして医療とは…などなど深く考えさせられるストーリーです。
ただどれもこれも深いテーマなので、絞り込んだほうがもっと印象に残ったかも。
少々つめこみすぎな感もしますが傑作であることは間違いナシ。

2008年9月19日金曜日

殴られ屋の女神



池永陽さん「殴られ屋の女神」
「なぐられ屋。1発千円、女性は半額、1発でKOした方には十万円進呈」という殴られ屋を生業とする須崎。
会社にも妻にも見捨てられた須崎は、自分のことを父のように慕ってくるリストカッターの美少年男娼「豊」のマンションに居候をしている。
悩みを抱え、殴られ屋の元に集まってくる不器用でな人たちの人間模様が書かれています。
あの名作「コンビニ・ララバイ」までの感動はなかったですが、全ての人たちに対する暖かいまなざしがこめられた連作長編です。

2008年9月9日火曜日

ララピポ



奥田英明さん「ララピポ」
あいかわらず、どうしょうもない人間を描くのが上手ですねぇ。
対人恐怖症でデブのフリーライター、キャバクラのスカウトマン、AV出演するおばさん、カラオケボックスの店員、エロ小説家、デブ専の裏DVD女優を副業とするテープリライターなど、登場人物が全員おかしい。
みな欲望(とくに性欲)の向くままに行動し、ドツボを踏む。
救いのない小説でした.

イコン



今野敏さん「イコン」
若者に熱狂的な人気のバーチャルアイドル「有森恵美」。彼女公認のアリモリ・ファミリーのコンサートで殺人事件が起きた。その後の学園祭のコンサートでも死者が。
連続殺人なのか?そもそも有森恵美は実在するのか?
パソコン通信を利用した殺人というあたりは少々時代が古い感じもしましたが、圧倒的なアイドル論には感心してしまいました。
安積警部補は「蓬莱」で活躍された刑事さんですね。

2008年8月27日水曜日

パコと魔法の絵本



関口尚さん「パコと魔法の絵本」
事故が原因で1日しか記憶がもたない少女パコ。その純真さに心打たれる病院のみんな、そして僕。
登場人物のキャラが際立っていて(ありえないキャラばかりかも)面白進んでいくのですが、パコによって変わっていく人たちのストーリーが感動的でした。
子供にもわかりやすいお話なのですが、不覚にも涙が出ました。
なんだか心洗われたような気持ちです.

2008年8月24日日曜日

さよならバースディ



萩原浩さん「さよならバースディ」
チンパンジー以上、幼児並の知能を持つといわれている「ボノボ」。バースディと名づけられたボノボの言語習得実験をする研究者の真。一緒に研究をしている恋人が研究室から飛び降り自殺をした。プロポーズをした夜に…。どうして彼女は死ななければならなかったのか?現場にいたバースディから聞き出そうとするが…。
切なく、感動的なストーリーでした。よかったです。
萩原さんの引き出しの多さにまたまたびっくりさせられました。

2008年8月22日金曜日

白光



連城三紀彦さん「白光」
名作「戻り川心中」の連城三紀彦さんのミステリー。
自宅で預かっていた姪が何者かに殺され、庭に埋められていた。
一家の主婦、ボケた義父、夫、殺された姪の母である妹、妹の夫、妹の浮気相手、いったい誰が殺したのか?
全員が胸の底に悪意を抱えている。いやな家族のお話でした。

2008年8月16日土曜日

追憶のかけら



貫井徳郎さん「追憶のかけら」
自分の遊びが原因で実家に帰った妻を交通事故で失い、娘もそのまま自分の大学教授でもある妻の実家に引き取られてしまった、うだつのあがらない大学国文学講師の松嶋。
そんな松嶋のもとに、終戦直後に活躍した小説家の未発表手記が持ち込まれる。そこには小説家自殺にいたるまでの経緯が書かれており、自殺の真相を解き明かすことが手記を発表する条件であった。
娘を取り戻すため、目立つ業績を残したい松嶋は真相究明に乗り出すが…。
小説の半分を占める手記も興味深く、なかなか面白く読みました。
この手記を松嶋にわたるように仕組まれた「悪意」がちょっと強引な気がしますが、ミステリーというよりもラブストーリーとしてとらえればなかなかよいお話だと思います。

2008年8月9日土曜日

デッドウォーター



永瀬隼介さん「デッドウォーター」
5人の女性を強姦殺人した死刑囚。塀の中で死を全く恐れず、ある意味達観したような理論で関わる人々を取り込んでいく。
そんな「怪物」に死の恐怖を味わわせることで復讐を果たそうとするフリージャーナリスト。
面白いです。一気に読んでしまいます。
映画化(ハリウッド映画)されるとヒットするような感じもするサイコサスペンス小説です。

2008年7月30日水曜日

僕の行く道



新堂冬樹さん「僕の行く道」
小・中学校向けの児童小説みたいでした。
小学3年生の男の子が1人でお母さんに会いに行くお話し。その道程でいろんな人に会い助けてもらい、素直な心で出会った人たちを癒していく。そして切ないけど爽やかな結末。
ありがちなストーリーではありますが、素直に感動しました。
登場人物がよい人ばかりで、よい意味で心洗われました。

2008年7月26日土曜日

氷の華



天野節子さん「氷の華」
よく出来たミステリーです。
セレブの専業主婦「恭子」に突然、夫の不倫相手から「子供が出来たので別れてくれ」と電話がかかってくる。さらに恭子のことを「ビアグラスを冷やすことが出来ない家事の出来ない女。わがままで不妊症…」と罵倒しまくった。恭子はその不倫相手を毒殺するところから物語は始まります。
恭子を地道に追い詰める刑事と恭子の駆け引き。思わぬ方向にストーリーは流れていきます。
恭子のしたたかさと結末の意外性がとても面白い小説でした。
ドラマ化されるそうですが、恭子役が米倉涼子というのははまり役ですなぁ。

2008年7月11日金曜日

クローズド・ノート



雫井脩介さん「クローズド・ノート」
どこかで聞いた題名だと思っていたら、エリカ姫の「別に…」記者会見の映画の原作だったのですね。
雫井さんの小説はミステリーだけじゃなく、こんなあったかいお話もあったんですね。ちょっと意外ですが、実のお姉さんのことをモチーフに書かれたらしく素直に感心しました。
女子大生「香恵」が自分の部屋の押入れから前の住人であろう小学校の新人女教師「伊吹先生」の日記を見つけ、その内容に感動したり、励まされたりしていくストーリーです。
香恵ちゃんの天然ぷり(万年筆の試し書きで「人間国宝」と書いたくだりが特に笑えた)がかわいく、また伊吹先生と香恵ちゃんの性格のよさがよく出ています。
ありがちなストーリーかもしれませんが、ほろっとしちゃいました。心温まる小説です。

2008年7月3日木曜日

永遠の咎



永瀬隼介さん「永遠の咎」
池袋の無認可保育所に子供を預けるクラブのホステス「綾乃」、ヘルス嬢「聖子」、落ちぶれた中年ホスト「貞男」、そして綾乃の夫を殺し出所してきた「轡田」が絡むストーリー。
轡田が綾乃にまとわりつき、聖子の子供の死、貞男の凋落ぶり、どろどろとしたサスペンス調の話から、ラストにかけてはジェットコースターのような急展開、そして悲しい事実とラスト。
他の登場人物も皆際立っていて、圧倒的に読ませる力作です。

2008年6月26日木曜日

雪虫



堂場瞬一さん「雪虫」
前々からやたらと書店で宣伝していたので、読んでみました。
祖父・父親も刑事であり、自分も新潟県警捜査一課の刑事となった「鳴沢了」シリーズの第1作。
殺人事件の被害者の老女は50年前、新興宗教の教祖であった…。
過去の殺人事件と祖父・父親の関係…。
刑事として生まれ、刑事としてしか生きていけない「鳴沢了」。
ソフトタッチなハードボイルド刑事小説って感じです。

2008年6月20日金曜日

狼の血



鳴海章さん「狼の血」
普通のサラリーマンが拳銃をひょんなことから手にした時から変わっていく。
どちらかというと小心者であるサラリーマンの日常の生活から、拳銃を手にしてからの心中などが、ものすごくリアルに書かれている。
どんどん殺人を犯していくのだが、対象は親父狩りの若者、性格のゆがんだ立ち食いそばの店員、なんちゃって女子高生であり、どうしょうもない会社の上司は頭の中でしか殺していない。
ところがまたリアル。
リアルであるが決して自分はそうはならないと思う。というか思いたい。

2008年6月3日火曜日

孤宿の人

 

宮部みゆきさん「孤宿の人」
「ほう」は「阿呆」のほう、と名づけられた少女。
誰からも祝福されず、身の上をたらいまわしにされながらも、生きていく「ほう」。
「ほう」という少女が、かわいそうで、けなげで、かわいくて、何度も涙しました。
「ほう」の理解者「宇佐」のやさしさにも心打たれます。
いつもながら宮部さんの小説は、暖かいですね。
特に今回は子供への愛情が感じられました。
自然と涙がこぼれる、感動の物語です。

2008年5月28日水曜日

いつか、虹の向こうへ



伊岡瞬さん「いつか、虹の向こうへ」
ある事件で有罪になり(はめられたのだが)、職も家庭も失った元刑事。服役後、警備の仕事で暮らしている。唯一残された古い家には、わけありの3人の居候と同居生活を送っている。そこに家出少女が転がり込んだのだが、その少女に殺人容疑が…。ヤクザに脅されながらも少女を救うために真相を探っていく元刑事。
ハードボイルドのくくりになるのでしょうが、主人公を含め、それぞれ悲しい過去をかかえている居候の3人の絆が心地よい物語です。
ドラマ向きの話なので、横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞、W受賞しTVドラマ化されたのもうなずけます。
題名にもなった「虹売り」の童話は悲しいお話ですね。

2008年5月26日月曜日

リオ



今野敏さん「リオ」
「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズの第1作に当たる小説。
樋口さんの性格が一番詳しく書かれています。
小心者で自分に自信が持てない、けれどもそれが良いほうに転んでいく。
そんな樋口さんにとても好感がもてます。
もちろんお話もおもしろいですよ。
美少女「リオ」の姿を想像してやまないストーリーでした。

2008年5月21日水曜日

神はサイコロを振らない



大石英司さん「神はサイコロを振らない」
ちょっと前にTVドラマ化され、評判が良かったので読みました。
タイムスリップした旅客機が乗客を乗せて10年後に戻ってきた。ただ3日後にはみんな消えてしまう運命。自分よりも10年年を重ねた人たちとの再会、そして残された3日間の中でどう生きるか…。
とても面白く感動的なお話なのですが、いかんせん登場人物が多すぎるし、淡々と話が進んでいくので、感動も半減。ドラマの方が良かったようです。
以前に読んだ同じ作者のタイムスリップものとしての「ぼくらはみんな、ここにいる (中公文庫 お 67-2)」の方が感動しました。

2008年5月16日金曜日

禍家



三津田信三さん「禍家」
ホラー+ミステリーなのでしょうか。
なんだかなぁ、安っぽい感じ?
中高生の時代に読んだら怖かったのかなぁ。

2008年5月12日月曜日

朱夏



今野敏さん「朱夏」
「ビート」が面白かったので引き続き「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズ2作目です。
主人公の樋口警部補の妻が誘拐された。その救出劇のお話です。
今回も樋口さんのイイ味がでています。
争いは好まず、自分には自信が持てないがきっちりやることはやる樋口警部補。
イイ人です。
面白かったので、1作目の「リオ」も読もうっと。
「青春」の次に来る季節が「朱夏」だそうです。

ビート



今野敏さん「ビート」
「隠蔽捜査」「蓬莱」とハズレがなかったので、「警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ」を読みました。(3作目ですが)
銀行の不正を暴くガサ入れの情報を、大学柔道部の後輩である銀行員に漏らしてしまった刑事。その銀行員が殺され、自分の息子が犯人だと確信する。
警察小説の中に家族の再生が書かれた、心温まる物語です。

2008年5月6日火曜日

聖者は海に還る



山田宗樹さん「聖者は海に還る」
生徒が教師を射殺し自殺する事件のあった中高一貫の進学校に、心のカウンセリングのために招かれたスクールカンセラー。その爽やかな人柄と即効性のあるカウンセリングで生徒の心も落ち着いてきた。
ただ彼には少年期に心理療法で押さえ込まれた邪悪な心が残っていた…。
一気に読ませる小説です。
心が壊れていく様がリアルで悲しいですが、最後には希望の残る物語です。

2008年5月1日木曜日

蓬莱



今野敏さん「蓬莱」
傑作です。面白いです。
国造りシュミレーションゲーム「蓬莱」がスーパーファミコンのソフトで発売される直前、ヤクザから発売妨害の嫌がらせを受ける。背後には政治結社や大物政治家の影が…。たかがゲームに一体なぜ?
秦の始皇帝から命を受け、不老不死の薬を求め現在の日本に渡ってきた来たという「徐福」の伝説がからみ、読み応え十分の内容です。
ゲームはあまり好きではないのですが、この「蓬莱」はプレイしてみたいなぁ。

正義の証明

 

森村誠一さん「正義の証明」
森村さんの「人間の証明」「野生の証明」が好きだったので、大いに期待して読みました。
なんでしょう、ありえない設定というか、文章が昭和チックというか、「正義」について全然証明されていなぁい。上下巻あるのですが途中からナナメ読みしてしまいました…。

繋がれた明日



真保裕一さん「繋がれた明日」
以前、NHKのTVドラマで見ましたが、原作を読んでいなかったことに気づき読んでみました。
誤って(殺意はなく)人を殺してしまい服役し、仮出所した主人公。
彼を待ち受けていたのは、自分のため人生の歯車が狂ってしまった人たちからの(家族もふくむ)冷たい対応であった…。
読み進めているうちに、ドラマのシーンがよみがえり、小説に忠実な出来であったなぁと変なところで感心。
感動も半減し、さきに読んでおくべきであったと思いました。

2008年4月19日土曜日

とげ



山本甲士さん「とげ」
地方都市の市役所、市民相談室に勤める主人公。上しか見ない上司、やる気のない部下、面倒なことはたらいまわしの職員、そしてしょーもないことで苦情の電話をかけてくる市民に振り回される毎日。
上司は汚職で逮捕、妻は交通事故をおこし、家には何者かのいやがらせ、公園にワニが出現、市長からの暴行・もみ消し…など、これでもか、これでもかというトラブルに否が応でも巻き込まれていく。
冷静にではなく、切れながらも対応していく主人公は好感が持てました。
最後まで正義?を貫いてほしかったのですが、計算高く仕組んだことがあったので、それだけがちょっと残念でした。(逆にリアルなのかも?)
まあ、他の登場人物に比べればぜんぜんまともなのですが…。
作者の山本甲士さんは、あの映画「三丁目の夕日」の原作者なんですね。

2008年4月13日日曜日

震度0



横山秀夫さん「震度0」
誰からも慕われ人望の厚い警務課長の突然の失踪。なぜ、どこに失踪したのか?
同時期に発生した阪神大震災そっちのけで、警務課長の失踪に踊らされる主要幹部たち。
キャリア、ノンキャリア、それぞれの思惑、駆け引き、事実の隠蔽、パワーバランス…どろどろした警察の人間関係が見事に描かれています。
さすが横山さん…というところですが、内容は短編でも充分だったのではと思いました。
それも横山さんの短編が素晴らしいからこその勝手なイメージなのかなぁ…。

2008年4月5日土曜日

チューイングボーン



大山尚利さん「チューイングボーン」
「壊れるもの」に引き続きまたホラー小説を読んじゃいました。
読み終えて、どんよりした気持ちになってしまいました。
電車の中から外の風景をビデオ撮影をする依頼を受けた主人公。その撮影中に起こる人身事故、そして撮影の報酬として振り込まれる大金。
なぜ事前に人身事故が起こるのを予測できるのか?なぜその事故を撮影することで大金が振り込まれるのか?誰が何の目的で撮影させているのか?真相はトンデモ話ではなく、ありえるかもしれない話なところが感心したとともに、どんよりとしてしまったというところです。

壊れるもの



福澤徹三さん「壊れるもの」
大手百貨店の課長の主人公。郊外に一軒家を購入しささやかながらも順風な生活を送っていたが、会社の業績悪化、同僚の足の引っ張り合い、リストラ…と見事なまで?にハイスピードで転落人生を歩み始める。
一軒家にまつわるホラー的要素がメインなのかもしれませんが、主人公の転落ぶりのストーリーの怖さが際立っていました。

2008年3月30日日曜日

風の歌、星の口笛



村崎友さん「風の歌、星の口笛」
SFはあまり読まないのですが、SFミステリーということでなかなか面白く読めました。
私立探偵が少女から「コンピュータによって生み出されたクマのペットを生き返らせる依頼」を受けるお話、地球と同じ環境の人口惑星に瀕死の状態の地球再生のために250年かけてたどり着いてからのお話、交通事故から退院すると恋人の存在が「自分の記憶」を除き一切消えていたお話、未来の3つのストーリーが平行して描かれています。
交わることのないストーリーのようですが、最後に3つのストーリーのつながりが明らかになります。
少し物悲しさをもって…。
なんとなく手塚治虫先生の「火の鳥」を思い出しました。

2008年3月23日日曜日

TENGU(てんぐ)



柴田哲孝さん「TENGU(てんぐ)」
26年前の群馬県小さな村で発生した連続殺人。被害者は人間業を超えた壮絶な殺され方であった。
村では天狗の仕業とのうわさも流れたまま、事件は迷宮入りに。現在その事件の真相が当時事件に関わった新聞記者の執念と、DNA鑑定などにより暴かれることに…。
アメリカ軍、ベトナム戦争の関連、村の悲しい歴史、そして美しく悲しい謎の女性「彩恵子」の存在。
一気に読ませる小説です。面白かった。

2008年3月16日日曜日

流星の絆



東野圭吾さん「流星の絆」
さすが東野先生、すばらしい小説で一気に読んでしまいました。
両親を惨殺された、3人兄妹の復讐劇と書くと、「白夜行」のようなクライムノベルのように思われますが全く趣は違います。あったかい気持ちになります。
そしてラストに涙と帯にもありましたが、僕は両親が殺される幼少の頃のストーリーに涙しました。
両親に隠れ3人で真夜中に流星群を見に行った間に両親が殺され…。深い兄妹愛が胸を打つ小説です。
近いうちにドラマ化されそうな予感もあります。そのときは原作に忠実にドラマ化してほしいなぁ。
(白夜行は小説とドラマが別物になっていたので…)

2008年3月8日土曜日

ラストソング



野沢尚さん「ラストソング」
博多のロックスターのシュウ、天才ギタリストのかずや、そしてマネージャーのリコの3人の軌跡をつづった青春小説。
この歳になると青臭さが鼻につくストーリーではあります。高校生位なら、もっと感情移入できたのかも。
でも、ドラマのようにスラスラ読めちゃうあたりは、さすが野沢尚さんです。
「破線のマリス」以前に書かれたそうですが上手いですね。
本当に惜しい人を亡くしました。もっと野沢尚さんの小説を読みたかったです。

2008年3月2日日曜日

隠蔽捜査



今野敏さん「隠蔽捜査」
警察官僚の竜崎。「東大卒以外は大学ではない」など、エリートたる高飛車な意識満々の主人公。絶対に、友達になれないイヤなヤツ。家族からは、一般の感覚が欠如していると思われ、他の官僚からは融通のきかないやつと見られ、「変人」と言われている。
だが、竜崎の心には、「エリートは国家を守るため、身をささげるべきだ」という考えがあり、その考えを元に行動しているだけである。
現職の警察官による連続殺人事件を「事件の迷宮入り」として隠蔽を画策する警察官僚と対決していく姿、息子の不祥事をもみけさず自首させる姿、正義を貫く官僚です。
こんな官僚ばかりだと、もっと世の中よくなるのになぁ…。

2008年2月24日日曜日

九月が永遠に続けば



沼田まほかるさん「九月が永遠に続けば」
夜ゴミを捨てに行ったまま、突然失踪してしまた息子、電車のホームから転落死した愛人、分かれた夫の再婚相手の壮絶な過去と現在。
どろどろとした重く暗い話が続きますが、どんどんストーリーに引き込まれていきます。
そして予想外の結末が待ってます。
気が重くなる話ですが、圧倒的に読ませる小説です。

2008年2月17日日曜日

オレたちバブル入行組



池井戸潤さん「オレたちバブル入行組」
バブル期に入社し、現在中間管理職、融資課長の半沢。
支店長のゴリ押しで、5億円の新規融資をした会社が倒産。その責任を半沢が負わされるはめに。
納得いかない半沢は真相を調査していくが…。
勧善懲悪なお話で、読んでいて痛快であります。
ページをめくる手がとまらない面白い小説です。

2008年2月9日土曜日

しゃぼん玉



乃南アサさん「しゃぼん玉」
泣きました。心があったかくなる小説です。
ナイフで切りつける通り魔、ひったくりを繰り返すどうしょうもない若者「翔人」。
逃亡の途中でバイクのカブで転倒していたスマ嬢(老婆です)を助けたことから、スマ嬢の住む宮崎県椎葉村にたどり着く。若者はほとんどいない田舎の村で、翔人のことを暖かく歓迎する住民。
人を疑うことを知らないような人たちに囲まれているうちに翔人は…。
「人生は”やり直し”できるんだよ。」とシゲ嬢やシゲ爺のいる椎葉村の老人たちに教えてもらえます。
読後、すがすがしい、やさしい気持ちになれるお勧めの小説です。

2008年2月3日日曜日

わが名はレッド



ジェイマス・スミスさん「わが名はレッド」
Mr.クインのジェイマス・スミスさんの2作目、原題「RED DOCK」。
主人公のレッド・ドッグは前作のジェード・クインと同じ犯罪プランナー及び実行犯。
クインには動機がないが、レッドには深い動機があり、長い復讐劇が始まります。
レッド予想外の連続猟奇殺人鬼のピカソが絡み、ハラハラドキドキのストーリー展開に。
映画化すると、間違いなくヒットすると思う面白い小説です。
個人的には、Mr.クインの方が好きですが…。
ついでにタイトルは「わが名はレッド」よりも原題そのまま「RED DOG」がよいのでは?

2008年1月26日土曜日

償い



矢口敦子さん「償い」
仕事ばかりで家庭を顧みず、子供を死なせ妻を自殺に追いやってしまったエリート医師。医療ミスの責任も負わされホームレスとして生きている。過去に自分が命を救い今は聡明な中学生に成長した少年と出会うが、連続殺人犯じゃないかと疑いを持ち始める…。
「人の肉体を殺したら罰せられるけれど、人の心を殺しても罰せられないんだとしたら、あまりにも不公平です」という言葉が深いメッセージとして流れ、それでも最後には救いのあるミステリー小説です。

2008年1月19日土曜日

Mr.クイン



シェイマス・スミスさん「Mr.クイン」
海外の小説ですが、面白かった!
犯罪プランナー「ジャード・クイン」。麻薬王の影のブレーンとして決して姿は現さず、完璧な犯罪をビジネスとして計画する男。
悪を倒すのではなく、善良な人々を次々に陥れ、殺害もいとわない悪いやつ。
本物の悪人。そのやり口は、読んでいて胸糞悪くなるほどです。
そしてクインはずば抜けて頭が切れる。おこうるべき事態を予測して完璧な手をうつ。
不測の事態(クインには不測の事態がありえないのか)にもあわてずに見事やりぬける。
やってることは最悪ですが、頭の良さにしびれる小説です。
面白いと思うのもはばかれるかもしれないが、最高に面白い小説です!

2008年1月14日月曜日

愚か者死すべし



原寮さん「愚か者死すべし」
沢崎探偵シリーズ。さすがです。
原寮さんの沢崎探偵シリーズは全て読んでいますが、今回も期待を裏切らなかった。
沢崎探偵の魅力、ストーリー、どれをとっても満足です。
あまりハードボイルドは読まないのですが、この沢崎探偵だけはかっこいいです。
男の憧れですなぁ。
過去の沢崎シリーズも読み返したくなりました。

誤算



松下麻理緒さん「誤算」
資産家の遺産相続に群がる親族。その資産家の看護のため住み込みで働き始めた看護師。
その看護師も遺産相続に巻き込まれたいくストーリー。
読みやすいですが、ちょと物足りない気もします。
2時間ドラマにでもなりそうなとてもライトなミステリー。

2008年1月5日土曜日

自由死刑



島田雅彦さん「自由死刑」
1週間後の金曜日に自殺使用と決めた喜多善男。自殺するまでの1週間のお話です。
酒池肉林、臓器移植、殺し屋、アイドルの誘拐などありえないことが、その1週間の間におこります。
死ぬこと決めたら、怖いものはなくなるのか…。
「自由死刑」を決めた金曜日から死刑執行の金曜日まで、曜日ごとに話は分けられています。
それまでは、基本ドタバタ喜劇のようで、それなりに楽しく読めたのですが、ちょっとシニカルな最後の章「SOMEDAY」はいらないと思った僕です。