2009年2月24日火曜日

沖で待つ



絲山秋子さん「沖で待つ」
芥川賞受賞作をおそらく初めて読みました。
残念ながら僕にはさっぱりよさがわかりませんでした。
申し訳ないです…。

さくら



西加奈子さん「さくら」
家族、兄・弟・妹、飼い犬が織り成すちょっと変で、ステキな物語です。
妹のミキが生まれた日、ちっちゃな犬のサクラをもらってきた日、兄が弟、妹を守る幼い日々、かこいいお兄ちゃんに降りかかった運命、バラバラになった家族と再生…。
心温まるお話がいっぱい詰まっています。
どんなときも”あるがまま”の犬のサクラに家族みんな、そして読んでいる僕も救われたと思います。
あったかい涙がこぼれた小説でした。

2009年2月21日土曜日

ストロベリーナイト



誉田哲也さん「ストロベリーナイト」
グロいオープニング、そして青いビニールシートに包まれた惨殺体が発見される。
前々から、どこの書店でも面白いと宣伝されていたのですが、これでもかというくらいの宣伝だったので逆に読まずにきたのですが、根負けして読んでみました。
結論、僕にはもう一つでした。
解説にも書かれているとおり、作者は実在の役者をキャスティングして書かれているとのことで、確かに主役、脇役それぞれのキャラは際立っていますが、際立ちすぎてリアリティーのないストーリーになっているように思いました。
スピード間もあり面白くないことはないのですが、小説というよりも、ドラマの脚本を読んでるような…。

2009年2月19日木曜日

KAPPA



柴田哲孝さん「KAPPA」
茨城県にある牛久沼。ブラックバス釣りに来た男が上半身を食いちぎられた。
目撃者は「カッパ」に襲われたと証言。牛久沼はカッパ伝説もある沼だ。
果たして、本当にカッパの仕業なのか…。
フリーのルポライター、刑事、老人、少年、ルポライターの飼い犬が謎を追う。
柴田哲孝さんの小説「TENGU」ほどではないですが、なかなか楽しんで読むことができました。
途中からカッパの正体がなんだかよめてきましたが…。
ルポライターの飼い犬ジャックはカヌー犬ガクを思い出させます。
「TENGU」にしろ「KAPPA」にしろ「トンデモ小説」にならないところが、
柴田さんの小説のよいところだと思いました。

2009年2月16日月曜日

水底の森





柴田よしきさん「水底の森」
顔を潰された死体が発見され、そのアパート部屋の住人「風子」が失踪、逃避行が続く。
現在と過去が交錯しながら、風子の「嫌われ松子」のような転落人生が語られます。
嫌われ松子ほどリアリティはないですが、松子は自業自得、風子は不幸を呼び寄せる哀しい性をもった女のような気がします。
風子に吸い寄せられるのはある意味似たもの同士の男たちで、みな風子と一緒に転落人生を歩んでいきます。
哀しいミステリーでした。

2009年2月9日月曜日

風の墓碑銘




乃南アサさん「風の墓碑銘」
直木賞「凍える牙」音道貴子シリーズです。
解体工事中のアパート跡から、成人男女と嬰児の白骨死体が発見されたところからストーリーは始まります。
白骨死体は誰なのか?鍵を握るアパートの大家は呆け老人で情報を得ることができない。今度はその老人が撲殺された。犯人は誰なのか?白骨死体と老人の関係は?
主人公の音道、コンビを組む中年の滝沢刑事…、ストーリーもさることながら、乃南アサさんの小説は人物描写が抜群にすぐれてます。
スピード感はないのですが、その人間描写でじっくり読ませるミステリーでした。

2009年2月4日水曜日

裂けた瞳



高田侑さん「裂けた瞳」
第4回ホラーサスケンス大賞受賞作なのですが、ホラーというよりも、泣けるサスペンスといった作品。
他人の感情を感じ取る能力を持つ主人公。そして若く魅力的な不倫相手の長谷川瞳。
常軌を逸した復讐屋の少年との対峙がホラーであり、ラストでわかる長谷川瞳と主人公の境遇が泣かせます。
本当に涙しました…。

2009年2月1日日曜日

まほろ駅前多田便利軒



三浦しをんさん「まほろ駅前多田便利軒」
じわじわと面白さが伝わり、癖になるお話しです。
東京郊外のまほろ市で便利屋を経営する多田のもとへ、高校時代の同級生である行天がころがりこんでくる。そこから始まるドタバタ喜劇でありほろりとする人情劇がくりひろげられます。
悲しい過去を秘めた多田、ペットのようであるが、悲しさと凶暴さを併せ持つ行天。心優しい娼婦のルルとハイシー、チワワのハル、よわっちいチンピラのシンちゃんなどなど、登場人物が超魅力的です。
多田が、行天に怒って言った「おまえの変菌が移ったんだろ」と言う言葉に、「変菌ってなんだ、ガキか俺は」と怒りが怒りを呼んでゴミ箱を蹴飛ばすくだりは笑いました。
「幸福は再生する」という言葉があったかーく心にしみる物語でした。