2008年4月19日土曜日

とげ



山本甲士さん「とげ」
地方都市の市役所、市民相談室に勤める主人公。上しか見ない上司、やる気のない部下、面倒なことはたらいまわしの職員、そしてしょーもないことで苦情の電話をかけてくる市民に振り回される毎日。
上司は汚職で逮捕、妻は交通事故をおこし、家には何者かのいやがらせ、公園にワニが出現、市長からの暴行・もみ消し…など、これでもか、これでもかというトラブルに否が応でも巻き込まれていく。
冷静にではなく、切れながらも対応していく主人公は好感が持てました。
最後まで正義?を貫いてほしかったのですが、計算高く仕組んだことがあったので、それだけがちょっと残念でした。(逆にリアルなのかも?)
まあ、他の登場人物に比べればぜんぜんまともなのですが…。
作者の山本甲士さんは、あの映画「三丁目の夕日」の原作者なんですね。

2008年4月13日日曜日

震度0



横山秀夫さん「震度0」
誰からも慕われ人望の厚い警務課長の突然の失踪。なぜ、どこに失踪したのか?
同時期に発生した阪神大震災そっちのけで、警務課長の失踪に踊らされる主要幹部たち。
キャリア、ノンキャリア、それぞれの思惑、駆け引き、事実の隠蔽、パワーバランス…どろどろした警察の人間関係が見事に描かれています。
さすが横山さん…というところですが、内容は短編でも充分だったのではと思いました。
それも横山さんの短編が素晴らしいからこその勝手なイメージなのかなぁ…。

2008年4月5日土曜日

チューイングボーン



大山尚利さん「チューイングボーン」
「壊れるもの」に引き続きまたホラー小説を読んじゃいました。
読み終えて、どんよりした気持ちになってしまいました。
電車の中から外の風景をビデオ撮影をする依頼を受けた主人公。その撮影中に起こる人身事故、そして撮影の報酬として振り込まれる大金。
なぜ事前に人身事故が起こるのを予測できるのか?なぜその事故を撮影することで大金が振り込まれるのか?誰が何の目的で撮影させているのか?真相はトンデモ話ではなく、ありえるかもしれない話なところが感心したとともに、どんよりとしてしまったというところです。

壊れるもの



福澤徹三さん「壊れるもの」
大手百貨店の課長の主人公。郊外に一軒家を購入しささやかながらも順風な生活を送っていたが、会社の業績悪化、同僚の足の引っ張り合い、リストラ…と見事なまで?にハイスピードで転落人生を歩み始める。
一軒家にまつわるホラー的要素がメインなのかもしれませんが、主人公の転落ぶりのストーリーの怖さが際立っていました。