2009年3月15日日曜日

感染



仙川環さん「感染」
前々から本屋で面白いとプッシュしていたので、読みました。
結論、面白い!今回の本屋のプッシュは当たりでした。
連続幼児誘拐殺人事件の裏に隠された驚愕の真相!
ウイルス感染、臓器移植、医学会の闇が描かれた極上の医学ミステリーです。
仙川環さんの医学ミステリーは他にも出てるのでを読もうっと。

声だけが耳に残る



山崎マキコさん「声だけが耳に残る」
調教プレイにはまっている26歳引きこもりの椎貝加奈子。なりゆきで便利屋でアルバイトすることになる。平行して雑誌のDVの記事を見たことから、立ち直りたいとDVから女性を守る会から始まり、薬物依存症者やアダルト・チルドレンの自助会を渡り歩く。そのミーティングで知り合ったアダルト・チルドレンのケイ。この2人を軸に便利屋での出来事や閣下との調教プレイなどを軽快に面白く表現しながらもだんだんと重いストーリーになっていきます。
心が壊れた人間が心を修復しようと不器用に生きていくストーリーにいろんなことを考えさせられました。

2009年2月24日火曜日

沖で待つ



絲山秋子さん「沖で待つ」
芥川賞受賞作をおそらく初めて読みました。
残念ながら僕にはさっぱりよさがわかりませんでした。
申し訳ないです…。

さくら



西加奈子さん「さくら」
家族、兄・弟・妹、飼い犬が織り成すちょっと変で、ステキな物語です。
妹のミキが生まれた日、ちっちゃな犬のサクラをもらってきた日、兄が弟、妹を守る幼い日々、かこいいお兄ちゃんに降りかかった運命、バラバラになった家族と再生…。
心温まるお話がいっぱい詰まっています。
どんなときも”あるがまま”の犬のサクラに家族みんな、そして読んでいる僕も救われたと思います。
あったかい涙がこぼれた小説でした。

2009年2月21日土曜日

ストロベリーナイト



誉田哲也さん「ストロベリーナイト」
グロいオープニング、そして青いビニールシートに包まれた惨殺体が発見される。
前々から、どこの書店でも面白いと宣伝されていたのですが、これでもかというくらいの宣伝だったので逆に読まずにきたのですが、根負けして読んでみました。
結論、僕にはもう一つでした。
解説にも書かれているとおり、作者は実在の役者をキャスティングして書かれているとのことで、確かに主役、脇役それぞれのキャラは際立っていますが、際立ちすぎてリアリティーのないストーリーになっているように思いました。
スピード間もあり面白くないことはないのですが、小説というよりも、ドラマの脚本を読んでるような…。

2009年2月19日木曜日

KAPPA



柴田哲孝さん「KAPPA」
茨城県にある牛久沼。ブラックバス釣りに来た男が上半身を食いちぎられた。
目撃者は「カッパ」に襲われたと証言。牛久沼はカッパ伝説もある沼だ。
果たして、本当にカッパの仕業なのか…。
フリーのルポライター、刑事、老人、少年、ルポライターの飼い犬が謎を追う。
柴田哲孝さんの小説「TENGU」ほどではないですが、なかなか楽しんで読むことができました。
途中からカッパの正体がなんだかよめてきましたが…。
ルポライターの飼い犬ジャックはカヌー犬ガクを思い出させます。
「TENGU」にしろ「KAPPA」にしろ「トンデモ小説」にならないところが、
柴田さんの小説のよいところだと思いました。

2009年2月16日月曜日

水底の森





柴田よしきさん「水底の森」
顔を潰された死体が発見され、そのアパート部屋の住人「風子」が失踪、逃避行が続く。
現在と過去が交錯しながら、風子の「嫌われ松子」のような転落人生が語られます。
嫌われ松子ほどリアリティはないですが、松子は自業自得、風子は不幸を呼び寄せる哀しい性をもった女のような気がします。
風子に吸い寄せられるのはある意味似たもの同士の男たちで、みな風子と一緒に転落人生を歩んでいきます。
哀しいミステリーでした。

2009年2月9日月曜日

風の墓碑銘




乃南アサさん「風の墓碑銘」
直木賞「凍える牙」音道貴子シリーズです。
解体工事中のアパート跡から、成人男女と嬰児の白骨死体が発見されたところからストーリーは始まります。
白骨死体は誰なのか?鍵を握るアパートの大家は呆け老人で情報を得ることができない。今度はその老人が撲殺された。犯人は誰なのか?白骨死体と老人の関係は?
主人公の音道、コンビを組む中年の滝沢刑事…、ストーリーもさることながら、乃南アサさんの小説は人物描写が抜群にすぐれてます。
スピード感はないのですが、その人間描写でじっくり読ませるミステリーでした。

2009年2月4日水曜日

裂けた瞳



高田侑さん「裂けた瞳」
第4回ホラーサスケンス大賞受賞作なのですが、ホラーというよりも、泣けるサスペンスといった作品。
他人の感情を感じ取る能力を持つ主人公。そして若く魅力的な不倫相手の長谷川瞳。
常軌を逸した復讐屋の少年との対峙がホラーであり、ラストでわかる長谷川瞳と主人公の境遇が泣かせます。
本当に涙しました…。

2009年2月1日日曜日

まほろ駅前多田便利軒



三浦しをんさん「まほろ駅前多田便利軒」
じわじわと面白さが伝わり、癖になるお話しです。
東京郊外のまほろ市で便利屋を経営する多田のもとへ、高校時代の同級生である行天がころがりこんでくる。そこから始まるドタバタ喜劇でありほろりとする人情劇がくりひろげられます。
悲しい過去を秘めた多田、ペットのようであるが、悲しさと凶暴さを併せ持つ行天。心優しい娼婦のルルとハイシー、チワワのハル、よわっちいチンピラのシンちゃんなどなど、登場人物が超魅力的です。
多田が、行天に怒って言った「おまえの変菌が移ったんだろ」と言う言葉に、「変菌ってなんだ、ガキか俺は」と怒りが怒りを呼んでゴミ箱を蹴飛ばすくだりは笑いました。
「幸福は再生する」という言葉があったかーく心にしみる物語でした。

2009年1月28日水曜日

破裂





久坂部羊さん「破裂」
自然に死ぬことに抗い、命を救うことが絶対なのか?
本人・親族の強い希望があっても、PPP(ピンピンポックリ)安楽死は正義・倫理に反するのか?
力作です。医療ミス、権力闘争、延命、長寿、安楽死、現代の医学について考えさせられます。

2009年1月22日木曜日

空の中



有川浩さん「空の中」
SFファンタジーの分類にはいるのでしょうか。
少年・少女と謎の生物フェイクとのふれあい。少年少女のピュアな気持ち。フェイクのけなげさ。
不覚にも涙がにじみ、心が洗われました。

2009年1月10日土曜日

ワイルド・ソウル





垣根涼介さん「ワイルド・ソウル」
傑作です。力作です。感動しました。
大藪春彦賞、吉川英治文学賞、日本推理作家協会賞をトリプル受賞したのも納得。
日本政府に楽園とだまされ、失意の中死んでいったブラジル移民たち。
その2世たちが日本政府に復讐をする!
移民1世の地獄のような生活、外務省の理不尽な政策、南米のアンダーグラウンド世界などが圧倒的なリアリティーで描かれています。
日本政府に謝罪をさせるための周到な計画、登場人物たちの際立ったキャラクター、涙あり、時折笑いもありのとっておきの小説です。
それにしても、お役人ってどうしょうもないですなぁ。